映画『ピアニストを待ちながら』公式サイト
プロデューサー:熊野雅恵|企画:土田環|ラインプロデューサー:佛木雅彦|撮影:渡邉寿岳|照明:高橋哲也|録音:松野泉 黄 永昌|助監督:鳥井雄人|ヘアメイク:永江三千子|スタイリスト:小笠原吉恵|スチール:本多晃子|劇中戯曲:鈴木一平|原案協力:山本浩貴|振付指導:神村 恵|音楽:宇波拓|編集:宮島竜治 山田佑介|宣伝:平井万里子|宣伝デザイン:鈴木規子|予告編制作:日景明夫|HP制作:植田智道|WEB宣伝:ガブリシャス本田|宣伝協力:株式会社BOTA|協賛:行政書士法人東京国際経営法務事務所|配給協力 チャーム・ポイント|製作:合同会社インディペンデントフィルム/早稲田大学国際文学館

イントロダクションINTRODUCTION

異才・七里圭監督×主演・井之脇海

世界的建築家・隈研吾が手掛けた村上春樹ライブラリーで全編撮影!
出られない図書館を舞台に描く、 目に見えないものに紐付けられた若者たちの物語

ガラスの向こうは明けない夜。自動ドアはいつでも開くが、どういうわけか外には出られない。どこにも行けない理不尽な状況で、居合わせた男女5人は、なぜか芝居の稽古に興じ始める。まるで、幽閉されたことに甘んずるかのように。そこにはいない誰か、不在の視線を意識しながら……。

このおかしな物語は、私たちが経験したコロナ禍や、今や当たり前になったオンライン、SNSでの非対面コミュニケーションの奇妙さを暗示している。20世紀の不条理は、すでにリアル。私たちは、いつも不在の相手につながれて、待たされて、くたびれている。サミュエル・ベケットの有名戯曲を思わせる題名に、その意図が込められている。
映画の舞台となるのは、世界的な建築家の隈研吾が手掛けた、村上春樹ライブラリー。村上文学をイメージした迷宮的空間で全編撮影されたことも、見どころの一つだ。 本作は、この村上春樹ライブラリー(早稲田大学国際文学館)の開館記念映画として製作された短編をもとに、約1時間の劇場公開(ディレクターズカット)版として完成された作品である。

主演は、若手実力派の井之脇海。『東京ソナタ』(08)の天才ピアノ少年、『ミュジコフィリア』(21)の現代音楽に目覚める学生を更新するように、本作でも吹替なしのピアノ演奏を披露している。共演には、『福田村事件』(23)『熱のあとに』(24)など話題作の出演が続く木竜麻生とともに、『カゾクデッサン』(20)『劇場版 美しい彼〜eternal』(23)の大友一生を抜擢。そして、『王国(あるいはその家について)』等で鮮烈な印象を残す澁谷麻美、故青山真治監督作品で常連のベテラン俳優、斉藤陽一郎がわきを固める。

監督は、今年デビュー20周年を迎える七里圭。劇場初作品の『のんきな姉さん』(04)で注目され、カルト的な人気を誇る『眠り姫』(07/サラウンドリマスター版16)や『DUBHOUSE』(12)、「音から作る映画」プロジェクト(14〜18)、『背 吉増剛造×空間現代』(22)など、 常に先鋭的な作品を生み出してきた異才である。唯一無二のフィルモグラフィーを重ねる七里にとって、本作は久々の劇映画となる。

ストーリーSTORY

目覚めるとそこは真夜中の図書館だった。瞬介(井之脇海)が倒れていた階段の両側には、吹き抜けの天井まで高く伸びた本棚がそびえ、あちこちの段に小さなヒトガタが潜んでいる。扉という扉を開けて外に出てみるが、なぜか館内に戻ってしまう。途方に暮れた瞬介は、導かれるようにして一台のグランドピアノを見つけ、そっと鍵盤を鳴らす。

やがて瞬介は、旧友の行人(大友一生)とその彼女だった貴織(木竜麻生)に再会する。三人は大学時代の演劇仲間だった。行人と貴織はもう随分前からここにいるらしい。他にも、見知らぬ中年男の出目(斉藤陽一郎)や謎の女絵美(澁谷麻美)もいる。行人は、この状況を逆手にとって、かつて上演できなかった芝居の稽古を始める。それは、行人が作・演するはずだった「ピアニストを待ちながら」。しかし、瞬介には気になることがあった。確か、行人は死んだはずでは……?

キャスト&監督CAST & DIRECTOR

井之脇海(瞬介役)Kai Inowaki

1995年生まれ。神奈川県出身。‘08年、『トウキョウソナタ』(黒沢清監督)で第82回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞ほか複数の賞を受賞。’18年、監督・脚本・主演を務めた『3Words 言葉のいらない愛』がカンヌ国際映画祭ショートフィルムコーナー部門に入選。近年の主な出演映画に『護られなかった者たちへ』(21/瀬々敬久監督)、『ONODA 一万夜を越えて』(21/アルチュール・アラリ監督)、『ミュジコフィリア』(21/谷口正晃監督)、『猫は逃げた』(22/今泉力哉監督)、『とんび』(22/瀬々敬久監督)、『犬も食わねどチャーリーは笑う』(22/市井昌秀監督)、『almost people』(23/加藤拓人監督)、『バジーノイズ』(24/風間太樹監督)などがある。舞台「ボクの穴、彼の穴。W」が9月17日から東京、10月4日から大阪で上演。

木竜麻生(貴織役)Mai Kiryu

1994年生まれ、新潟県出身。2014年に大森立嗣監督『まほろ駅前狂騒曲』で映画デビュー。瀬々敬久監督の『菊とギロチン』(18)で300人の中から花菊役に選ばれ映画初主演、同年の『鈴木家の嘘』でヒロイン役を務め、毎日映画コンクールスポニチグランプリ新人賞やキネマ旬報ベスト・テン新人女優賞など数々の映画賞を受賞する。2022年には主演映画『わたし達はおとな』(加藤拓也監督)で北京国際映画祭フォーワードフューチャー部門最優秀女優賞を受賞。近年の主な出演映画に『ぜんぶ、ボクのせい』(22/松本優作監督)、『ヘルドッグス』(22/原田眞人監督)、『Winny』(23/松本優作監督)、『福田村事件』(23/森達也監督)、『熱のあと』(24/山本英監督)、『かくしごと』(24/関根光才監督)などがある。

大友一生(行人役)Kazuki Otomo

2002年生まれ、東京都出身。近年の主な出演映画に、『カゾクデッサン』(20/今井文寛監督)、『青葉家のテーブル』(21/松本壮史監督)、『HOMESTAY(22/瀬田なつき監督)、『サボテンと海底』(23/藤本楓監督)、『劇場版 美しい彼 ~eternal~』(23/酒井麻衣監督)、『夜が明けたら、いちばんに君に会いに行く』(23/酒井麻衣監督)、『バジーノイズ』(24/風間太樹監督)、『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話』(24/三木孝浩監督)などがある。

澁谷麻美(絵美役)Asami Shibuya

1987年生まれ、鹿児島県出身。映画、CM、ナレーション等で活躍。モデル活動を経て2013年から本格的に俳優業を開始。主な出演映画に、『螺旋銀河』(15/草野なつか監督)、『蝶の眠り』(18/チョン・ジェウン監督)、『船長さんのかわいい奥さん』(18/張元香織監督)、『まだ見ぬあなたに』(19/小澤雅人監督)、『滑走路』(20/大庭功睦監督)、『ゆめのまにまに』(22/張元香織監督)、『ペナルティループ』(23/荒木伸二監督)、『王国(あるいはその家について)』(23/草野なつか監督)、『義父養父』(23/大美賀均監督)、『ナミビアの砂漠』(24/山中瑶子監督)などがある。

斉藤陽一郎(出目役)Yoichiro Saito

1970年生まれ、北海道出身。94年、篠原哲雄監督のOV「YOUNG & FINE」のオーディションにて主役に抜擢され役者の道へ進む。青山真治監督のOV「教科書にないッ!」(95)に出演以降、青山監督のほとんどの作品に出演。同監督作品『Helpless』(96)にてスクリーンデビューを果たし、『EUREKA』(2000)『サッド ヴァケイション』(07)と北九州三部作に出演。『軒下のならず者みたいに』(03)では主役を演じる。近年の主な出演映画に『窓辺にて』(22/今泉力哉監督)、『春に散る』(23/瀬々敬久監督)、『ちひろさん』(23/今泉力哉監督)、『夜明けのすべて』(24/三宅唱監督)、『PLAY! 勝つとか負けるとかは、どーでもよくて』(24/古厩智之監督)、『蒲団』(24/山嵜晋平監督)、『愛に乱暴』(24/森ガキ侑大監督)などがある。

監督・脚本:七里圭Kei Shichiri

1967 年生まれ。早稲田大学卒業。シネマ研究会に所属し、先輩の手伝いから映画製作の現場で働くようになる。約 10年間の助監督経験、テレビドラマ等の演出を経て、山本直樹原作『のんきな姉さん』、短編『夢で逢えたら』 (ともに2004)で監督デビュー。しかし、『マリッジリング』(2007)以外は自主製作に転じて、異色の作品を発表。声と気配で物語をつづる『眠り姫』(2007/サラウンド リマスター版 2016)が、15 年間毎年アンコール上映を繰り返し、代表作となる。一方で、建築家・鈴木了二と共作した『DUBHOUSE』(2012)が第42回ロッテルダム国際映画祭他ヨーロッパ・北米のエクスペリメンタルな映画祭を席巻し国際的な評価を得る。この頃から、他ジャンルのアーティストとのコラボレーション作品も多くなり、「音から作る映画」プロジェクト(2014~2018)、「シネマの再創造」(2019~)など実験的な映画制作、映像パフォーマンスも手掛けるようになる。2020年にはロックダウン直前のベルリンとパリでの招聘公演が好評を博す。コロナ禍を経て、村上春樹ライブラリー・イメージ映像「The Strange Library」(2021)、記録映画『背 吉増剛造 × 空間現代』(2022)を公開。昨年は、「石巻ハ、ハジメテノ、紙ノ声、……」(京都芸術劇場春秋座)、「Music as film」Realtime voice-over and remix(東京ゲーテ・インスティチュート)、「清掃する女:亡霊」(早稲田小劇場どらま館)と三つの上演映像作品を演出。
2017年、山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション審査員。2003 年から 2016 年まで TBS「THE 世界遺産」の構成作家も務めた。2019 年より多摩美術大学非常勤講師。最初の作品は、高校時代に PFF‘85 に入選した(推薦:大島渚)8 ㎜映画『時をかける症状』(1984)。

●長編劇場公開映画/監督
2004 年 のんきな姉さん
2006 年 ホッテントットエプロン―スケッチ
2007 年 眠り姫(2016 年サラウンドリマスター版)
2007 年 マリッジリング
2016 年 サロメの娘 アナザサイド( in progress ) ※
2017 年 アナザサイド サロメの娘 remix ※
2018 年 あなたはわたしじゃない(サロメの娘 ディコンストラクション)※v 2022 年 背 吉増剛造× 空間現代
2023年 清掃する女:亡霊

●短・中編映画/監督
2004 年 夢で逢えたら
2008 年 once more
2010 年 Aspen
2012 年 DUBHOUSE
2014 年 To the light 1.0、2.0
2014 年 映画としての音楽 ※
2015 年 ドキュメント・音から作る映画 ※
2016 年 Music as film ※
2018 年 入院患者たち
2019 年 Necktie
2021 年 La Boussole
2021 年 村上春樹ライブラリー・イメージ映像「The Strange Library」
2022 年 The cleaning lady after 100 years : Spectre
2024年 ある渡り鳥を探して
(※は「音から作る映画」プロジェクト作品)

●長編劇場公開映画/脚本
2004 年 犬と歩けば チロリとタムラ (監督:篠崎誠)
2005 年 L'amant ラマン (監督:廣木隆一)

●テレビドラマ/オリジナルビデオ
1998 年 七瀬ふたたび(第9話・第10話)
1998 年 独房 X(新任女刑務官 檻の中の花芯)

コメントCOMMENTS

図書館という空間が演劇によって異化されるのを、この映画を見る者は目の当たりする。そこで演劇のリハーサルが繰り広げられること。しかも真夜中に。それによってそこに結界が生じる。そこがまぎれもなく異界になる。劇場でない空間が演劇によってまざまざと異化されるさまが、そのような演劇の上演そのものに立ち会う以上にそれを捉えた映画、つまり、この「ピアニストを待ちながら」という映画を見ることによって、よりまざまざと味わうことができるように思われるのは、しかし、なぜなのだろう?

岡田利規 (チェルフィッチュ主宰/演劇作家/小説家)

死の舞踏のフィニッシュが永遠に先送りされる。七里圭は現代映画をバロック化させた。ノイズと風景の反復によって、かつてはここに誰かがいたはずなのにとブツブツ唱えながら「誰が袖」を素描し続ける。「誰が袖」とはエンプティショットであり、七里映画にあっては、誰かが写っているショットも、本質的にはエンプティショットなのだ。エンプティショットがリフレインされ、延滞され、フットマークが貼り直される。

荻野洋一 (映画評論家、番組等構成演出)

『ピアニストを待ちながら』は、現今の社会を意識した実験的な作品であると同時に、遥か昔から問い続けられてきた「存在」の問題に、ある視座をもって応答する作品だと感じた。しかし、観客の目に映るのはユーモアに溢れたシーンの数々であるために、肩の力を抜いて鑑賞するのが得策です。笑ける余白のある時間を過ごしたい方におすすめです!

関田育子 (ユニット[関田育子]代表/脚本家/演出家)

「気づいたら、ここにいて……」「みんなそうだ。だから待つんだよ」――これが自分の物語でない人などいるだろうか。

柴田元幸 (米文学者・翻訳家)

劇場情報THEATER

都道府県 劇場名 電話番号 公開日 備考
東京都 シアター・イメージフォーラム 03-5766-0114 10/12(土)〜
大阪府 シネ・ヌーヴォ 06-6582-1416 11/2(土)~
神奈川県 横浜シネマリン 045-341-3180 11/16(土)~
京都府 出町座 075-203-9862 11/29(金)~