村上春樹ライブラリーのイメージ映像を七里監督が担当しました
10月1日に開館した早稲田大学国際文学館、通称「村上春樹ライブラリー」。
そのイメージ映像を、七里監督が担当しました。
監督は、その企画意図について、以下のように書いています。
開館記念の映像をどういうものにするか。構想するにあたって、(開館に寄せて村上春樹氏が掲げたキャッチフレーズ)「物語を拓こう、心を語ろう」について熟考することにしました。
そのヒントになったのが、アンデルセン文学賞の受賞スピーチです。このなかで春樹氏は、「小説を書くとき、物語の暗いトンネルを通りながら、まったく思いもしない僕自身の幻と出会います。それは僕自身の影に違いない」「影を排除してしまえば、薄っぺらな幻想しか残りません。影を作らない光は本物の光ではありません」と述べています。
それは、春樹氏の小説に取り組む姿勢をつまびらかに語るとともに、私たちが今生きる社会、現代文明のひずみ、その問題の本質を照射するスピーチであったと考えています。特に「影を作らない光」というメタファーは、都合の悪いものを排除し、どんどん白々と明るく清潔になっていく世の中、人間への警句に思えました。
一般的に、私たちは光によって物事を見ることができると考えていますが、事物が影をも併せ持つことを考えることなしには、あらゆる存在に対して表現が開かれていないと指摘しているのです。
国際文学館は、「物語を拓こう、心を語ろう」という言葉をその入口に掲げています。私にとって、「心を語ろう」とは、影と対峙するというメッセージだととらえ、そこから作品制作の着想を得ることにしました。
制作中、私たちスタッフ・キャストは「暗いトンネル」をくぐるように、毎夜、明かりを消したライブラリーの闇に、実際に身を沈め、光をあて出来る影を見ることで、イメージを決め、撮影するという姿勢を貫くことにしました。
そうして作られた映像は、村上氏の言葉と建物空間に導かれる「発見の旅」になると信じています。
イメージ映像は、国際文学館のHPで公開されているWEB版(3分)のほかに、オープニングイベントで上映されたフルヴァージョン(10分)もあります。今後の上映機会をどうぞお楽しみに。
WEB版は、こちら
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